ウェブ進化論

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

年末年始に,30冊位本を読み漁った.2007年に向けて,何を実行すべきのヒント探しのため.なかでも,かなり衝撃をうけた1冊がこれだ.本の内容もさることながら,何も知らない自分にだ.

概要

チープ革命

  • 下落するハードウェア,オープンソフトウェアによるソフトウェア無料化,
  • ブロードバンドによる回線コストの大幅下落,検索エンジンのような無償サービス充実

インターネットの可能性の本質

  • 放っておけば消えていってしまうはずの価値(金,時間の断片)といった無に近いものを,無限大に限りなく近い対象から,ゼロに限りなく近いコストで集積できたら何が起こるのか.

オープンソース開発者は世界で200万人を超えた

「次の10年」を変える「力の芽」の判断基準

  • 「力の芽」が「持てるもの」によって忌避される類のものである一方,「持たざるもの」にとってはもの凄い武器であるときにその「力の芽」は着実に育つ.
  • 1つ前の原理原則で動く仕事において失うものが大きいほど,過小評価し否定する.Linux

次の10年への三大潮流

インターネット,チープ革命オープンソース

ネット世界の三大法則(リアル世界では絶対成立し得ない)

  1. 神の視点からの世界理解
  2. ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
  3. 無限大×ゼロ=Something,消えて失われていったはずの価値の集積

グーグル

  • 知の世界の秩序の再編
  • 「こちら側」から「あちら側」へ
  • 「あちら側の巨大な情報発電所」 30万台のPCが24時間稼動
  • グーグルの競争優位の1つは,優秀な人間が泥仕事を厭わず自分で手を動かすという企業文化にある

新しい富の分配メカニズム

  • アドセンス:ウェブ(個人にとっての情報発電所)にカネを稼がせたい→バーチャル経済圏が構築.上から下へどかっとカネを流して大雑把に末端を潤す仕組みに変えて,末端の一人一人の貢献に応じてきめ細かくカネを流す仕組みを作ろうとしている.広告主のロングテールとメディアのロングテールをマッチングさせると,それらが成長していく

ゲイツのいう SuperSmart 「マイクロソフトウェイ」より抜粋

  • 新しい知識をすばやくリアルタイムで飲み込む能力.
  • 鋭い筆問をする能力.
  • 異なる分野の知識を関連つけて理解する能力
  • プリントアウトされたコードを一目みただけで理解できるほどプログラミングに長けていること.
  • ドライブや食事のときまでコードのことを考えているような熱意.
  • 極度の集中力.
  • 自分が書いたコードを写真のように思い浮かべられる能力.

楽天ライブドアは,生活密着型サービス産業.グーグル,最近のアマゾンは,テクノロジー産業

ヤフーは人で,グーグルは自動で

  • グーグルニュースは,ニュースサイトを全て巡回し,緊急性/重要性を自動的に判断し,優先順位付けし,自動編集してしまうサービス.

アマゾン

  • ネット小売業者からeコマースのプロトフォーム企業,テクノロジー企業への変貌.アマゾンのWeb2.0
  • たくさんの小売業者がアマゾンのテクノロジーインフラに寄生しなければ生きていけない世界を描いていた
  • 検索結果の上位を獲得することが最優先事項だとアマゾンは意識した.SEOサーチエンジン最適化)

Web2.0の本質とは

ネット上の不特定多数の人々(や企業)を,受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢.

「あちら側からAPIを公開する」

  • WebサービスAPI
  • 「こちら側」のAPIとは可能性空間が圧倒的に違う
  • 「こちら側」の大企業のシステムが,チープ革命によって,「あちら側」で100万倍のコスト差が生じてくる.
  • これが次の10年にIT産業に起こる大激変である.

自分にとって意味のあるものだけを自動抽出することの重要性は高まるばかりだが,その実現は難しい.この領域には,技術的にもビジネス的にも,未開の荒野が広がっている.

玉石混合問題解決と自動秩序形成システム

「個」→「全体」: リンクを張るという個の行為を集積して,検索エンジンの全体の価値が創造された.

  • 「全体」→「個」→「全体」: Wikipediaは全体先にありきの空間の中で,個の営みを集積.
  • 「個」「全体」がどちらが先でもいいのだが,「個」が「全体」のためにワークすると同時に,
  • 「全体」が「個」のためにワークする仕組みがうまく循環することで,自動秩序形成システムが生み出される可能性は大きい
  • ソーシャルブックマークフォークソノミー
  • 写真,音楽,映像に対する,検索エンジン×自動秩序形成システム などまだ全く存在しない.難しさは2つ.分類,整理が技術的に難しい.ユーザ要求の厳しさ(特に動画は評価に時間がかかる)
  • ブログでは飯は食えないが,信用創造装置,舞台装置としてのブログの意味合いは今後ますます高くなる.

知的生産性のツールとしてのブログ

  • 実際ブログを書くと言う行為は,恐ろしい勢いで本人を成長させる.
  • 自分がお金に変換できない情報やアイデアは,溜め込むよりも無料放出することで,(無形の)大きな利益を得られる.
  • 個人のとってのオープンソース,ブログとは何か.それはポートフォリオであり,面接であり,己の能力と生き様がそのままプレゼンテーションの装置として機能する.

高速道路の整備と大渋滞

  • オープンソース化は,「プログラムを書く」ことを学ぶための高速道路を一気に整備してしまったのである.
  • 多くの人が,次々とあるレベルに到達する一方,ニーズがなければ一気にコモディティ(日用品)化してしまう.