日本の電機産業再編へのシナリオ
日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道
- 作者: 佐藤文昭
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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ソニー,日立製作所,NEC,松下電器,富士通,三菱電機,東芝,シャープ,三洋電機...大手電機の生き残りのラストチャンスはいましかないと提言している.現在の横型コングロマリットを再編し,グローバルトップワンと呼ぶ世界有数規模の縦型の企業組織へと変わることが唯一の方法であると.具体的な事例と数字によって,海外企業との格差,ジリ貧から逃れられない現状と問題点,M&Aによる危機をわかりやすく説明している.さらに,生き残りの方法を具体的に提示し,2010年にむけた分析もしている.
大企業といえども,例えばロングテール的なビジネスモデルもあり得る.全てが規模で決まるとは思えない.また経営戦略を改善することで,コングロマリットだからこそ発揮できるメリットを追求していくことも可能だと思う.
経営者,社員はもっと危機感をもつべきとまとめているが,我々一般社員は5年もしないうちに決断を迫られるか,それすら気がつかずに捨てられるかもしれないと思った.
メモ
現状
ワーストシナリオ
- 大手電機が買収された後,分割され海外企業に売却
- 個別事業単位で外国企業と提携し,技術と市場を失う
外国資本が狙う理由
- 優れた技術力
- 経営改革により利益向上の余地あり
日本企業の問題
- 固定費削減のリストラで目先の業績悪化をしのいでいる
- 国内市場での過当競争
- 内弁慶ビジネス.携帯電話,パソコンなど
- 組織の縦割り構造.組織の制度疲労による官僚組織化.ソニーでいうサイロ.会社全体よりも事業部門の利益を優先するという考え方
- 終身雇用による人的派閥の形成.事務屋,技術屋.ハード屋,ソフト屋.文系,理系.職制の重視は,人事の硬直化を招き,お互いの職種や事業部門に対する相互不干渉が醸成されやすい.
- DRAM,液晶.海外への技術流出と資金力不足.
- 社長も役員も,ひとつのポストに長くても数年であることを前提とすると,長期的視野でリスクを犯して業界再編や撤退を決断し実行するよりも,現状維持を前提に単年度ベースで小額な利益でもという逃げに走るのは理解できないでもない.
技術をビジネスに生かせない
- 独自技術への過度のこだわり
- 横並びの技術開発戦略
- 国際的な技術標準戦略の弱さ.PCソフトなど
事業撤退できない5つの理由
グローバルトップワンへの再編
- 既存の大手電機を各事業単位で統合する.
- 優位性.大規模投資への対応.研究開発費高騰への対応.
- 実現の条件.マネージメントの改革.世界市場を視野に入れた経営戦略.
世界シェア上位でなければ大きな利益はあげられない
- デジタルは,高品質の製品を製造する障壁を劇的に低くした
- コンピュータ制御の工作機械,ロボット
- 世界規模の流通が活発化
- トップの決断と社員の危機意識の共有が重要