DVDレコーダが普及しない本当の理由


Yahoo!ニュース:DVDレコーダー>普及進まず 操作の難しさなどで敬遠か

という記事に対して思ったこと.

DVDレコーダが普及しない本当の理由

そもそもDVDレコーダーのメリットって何?

TV番組を録画して観る.つまり好きな時間にTV番組を視聴するタイムシフト.みんなと共有/貸し借りするためのダビング.所詮どれも,TV視聴が便利になった程度である.つまりTVのおまけ機能みたいなもんだ.おまけだから無くても死ぬほど困ることはない.実はコレは,ビデオテープレコーダーから現在のDVD/HDDレコーダーに共通する”利益が出ないビジネス”の本質かもしれない.

で,肝心のTV視聴はというと,メディアの多様化で,以前ほどTVを観なくなってきた.別の言い方をすると,情報源として頼らなくなった.TVでなくてはいけない理由がなくなってきたのである.

特に顕著なのは,仕事で多忙な30代,40代のサラリーマン.ニュースはもっぱらWebか新聞でさらっとなめる.じっくりTVでなんて時間はない.また,10代後半〜20代は,TVよりも携帯/Webという世代だ.最もTVを観るのは,もしかしたら50代以降の世代かもしれない.でも残念ながら,ビデオはやっと使えるけど,DVDレコーダ,PCは苦手という世代なのだ.

携帯やPCとTVやDVDレコーダーとの境界がなくなりつつあり,DVDレコーダーの立ち位置(ポジション)と明確なメリットがなくなってきているのは明白だ.

消費者(ユーザー)の利益を本当に考えているのか?

レコーダーとしてのメリットがなくなってきているという変化のなかで,メーカーは本当に消費者の立場/視点で,消費者の利益を考えているのかは非常に疑問である.

最近のDVDレコーダーの"売り"は以下が主なものだろうが,一体どれだけ消費者の利益になるのだろうか.

  • 次世代DVD対応
  • 地デジ対応
  • HD(ハイビジョン)対応

一部のマニアを除き,一般消費者からすると,多少画がきれいになったとか,多少容量が増えたとか,多少双方向(インタラクティブ)になったとか,この程度のことは残念ながら劇的なメリットとは思われない.つまり買おう,買い換えようとまでは思わないのだ.レコードはCDにとって変わったが,SACD/DVD-AUDIOにはなり得なかったのと同じだと思う.(もちろん,現実には製品とメディアの価格や,アナログ停波の時期などが複雑に絡んではいると思うのだが…)

メーカー側の論理

メーカー,放送事業者,コンテンツ製作側(映画会社など)の論理で物事が決まっていき,消費者の論理は後回しになっているのが現状ではないだろうか.メーカーは本来消費者側に立たなければならないが,実際は逆で,むしろ放送事業者,コンテンツ制作側のご機嫌を伺う形になっている.フォーマットの乱立,コピー制限などはまさにこれの影響である.

一方で,いらない機能満載で操作を複雑怪奇にさせているのは,家電メーカー間の勝手な競争の副産物であり,読めるわけのない分厚いトリセツは消費者に対する逃げ口上を書くため以外の何ものでもない.

30個のボタンがあるリモコンや,PCに似せたお世辞にも直感的とはいい難いグラフィカルユーザーインターフェイス.これらもメーカー側の一方的な論理で作られている.

では,どうすればよいか?

発想の転換

メーカー論理から脱却し,本当の意味でのユーザ視点に立つ事が必要である.こんなことは当たり前なのだが実際はできていない.Web2.0時代では,”ユーザ中心という考え方”はさらに重要視され(CGMマーケティングなど),これができないメーカーは淘汰される.

例えば,コピー制限などはフリーにしてしまって,全く別の(ユーザが負担に感じない)部分から儲けを出すような仕組み(ビジネスモデル)などはどうだろうか?

”モノを売る”から”サービスを提供する”視点に

こんな機能のモノができたので便利だから買ってください,ではなく,こんなサービスはどうですか?便利ですか?ではこんなサービスはどうですか?というふうに,もっと消費者(ユーザー)の直接の声を聞き,例えばインターネットと組み合わせた劇的に便利なサービスなどを提供するなどしないといけない.(アップル的戦略だけど)

例えば,こんなサービスはどうだろ?もはや録画といった概念はなく,番組表アプリケーションのみで,過去の番組表から自由に選んで番組を見ることができるサービス.製品(モノ)はあってもなくてもいいかもしれない.番組というコンテンツは,製品のHDDにあるのか,インターネットのあちら側にあるのかなんて気にしなくてよい.


いずれにしても,レコーダーは430mmの箱で…という既成概念から抜け出すことができたメーカーが生き残っていくのではと思う.日本の家電メーカーは大企業ばかりだ.DVDレコーダー事業部なんていう部署があった場合,こういった発想の転換は難しいのかもしれない.なぜなら自分自身の存在を見つめなおすことを意味するから.

シリコンバレーベンチャーが考えた,斬新なビジネスモデルにやられる前に,家電ビジネスにアップルが次のイノベーションを起こす前に,マジメに考え直すべきだと思う.