チームハックス / 大橋悦夫/佐々木正悟

チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術

チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術

ただチームハックスを紹介するだけではなく,それぞれに対する心理的見地からのフォローアップがあるのが本書の優れた特徴.

テーマは大きく2つ読み取れます.

  1. リーダーシップからメンバーシップへ : メンバーが主体となり,チームを活用する
  2. チームで共有する : 一人ひとりのメンバーが自分の行動をチーム内でガラス張りにすることによって,各メンバーは自然と相互に学びあう

今,僕らが行っているプロジェクト・コンサルティングのワークショップでは,まさにこういったチームハックが有効に機能しています.3人のチームですが,メンバーシップを発揮し,活動は短時間ながらかなりパフォーマンスはよいです.また著者の大橋氏と佐々木氏は,実際に本書を執筆する際にこれらのハックスを実践し,成果を実感されたようです.

なぜ,メンバーシップ主体のチームハックスが有効に機能したのか?

少数精鋭チームだからです.メンバーそれぞれが高い意識をもっていて,主体的に行動し,そしてスキルが高いからです.しかも少人数というのがポイント.もし大規模なチームでこの方法をうまく機能させるには,優れたリーダーもしくはリーダーシップが必要になると思います.つまり,ビジョンや方向性がしっかりと定まりメンバに浸透し,それぞれの課題やスコープ,役割がある程度明確に分担されていることが必要です.

僕らの本業であるプロジェクトは数十人〜百人規模.複数チームからなるプロジェクトになるわけですが,そこでは本書のようなチームハックスはなかなかうまく機能しません.実際30人程度でWikiを運用したこともありますが,うまく機能しませんでした.器を与えるだけではだめで,その器の意味や目的を浸透させるリーダーシップが少なくとも初めは必要で,そしてなによりもメンバの主体的な意思や行動が絶対条件になります.メンバの主体性や高いモチベーションを維持させるリーダーシップも必要になるというわけです.

本書で紹介されるチームハックスは,必ずしもどんなチームにも有効かというと残念ながらそうではありません.しかし,メンバーシップという意識を持つことはとても重要で,大規模なチームになればなるほど,実はとても必要なものであることは覚えておいたほうがよいでしょう.

メモ
  • ホーソーン研究
    • 作業効率は,作業上の物的環境の善し悪しよりも,働く人間同士の関係が良好であるか,自分たちの仕事には特別の関心が払われているかどうか,監督官が構成に評価してくるかどうか,に左右される
    • メンバー同士がお互いを認知しあうだけで,作業効率が著しく上昇する
  • タスクリストの共有
    • アクティブに共有 : 話しかける,メールする,MLに流す
    • パッシブに共有 : 掲示板,Wiki
  • 自分の頭から自分ではひねり出せないアイデアを,他人なら引っ張り出せる
  • 集団極性化(group polarization)
    • リスキーシフト(risky shift)
    • コーシャスシフト(cautious shift)
  • 集団機能
    • 目標達成機能(Performance) : チームを組むことで効率的なゴールを達成する機能
    • 集団維持機能(Maintenance) : メンバー間の対立や利害を調整したり,リームのルールや価値観の共有をする機能
  • 発達の最近接領域(zone of proximal development)
  • 現状維持バイアス : 一度何かを推定すると,心に中ですぐそれは確信に変わり,次にその確信を固めるための証拠探しを始める
  • ライミング効果 : 単語の記憶や連想の実験などで、先に与えられた情報(先行刺激)が、後に続く情報(後続刺激)の処理に無意識に影響を及ぼすこと
  • 防衛機制 : 自分が達成したい心理状態を達成するために,攻撃や逃避以外の手段を用いること.抑圧,反動形成,昇華,隔離,退行,打消し
  • 他人を理解するための8つの心理的法則
    1. 他の人とのつながりをもちたがる
    2. 失うことを悲しみ,失うまいとする
    3. 拒絶を嫌う
    4. 認められ,注目されることを好む
    5. まず苦痛を避け,それから喜びを求めようとする
    6. ばかにされたり,恥をかかされたりすることを嫌う
    7. 人がどう思うかを気にする
    8. 自分の人生を思いどおりにしたい
  • ドア・イン・ザ・フェイス : 頼みごとを,大変な仕事とセットにすると,簡単なほうを引き受けてくれる
  • フット・イン・ザ・フェイス : 段階的要請法
  • 凝集性を高める要因
    • メンバー間の相互理解
    • メンバーがお互いを受け入れていること
    • メンバーの役割が合理的に分かれていること
    • メンバーの意見や価値観が近いこと
    • メンバーの仕事に対する姿勢がなどが近いこと
    • メンバーがお互いに魅力を感じていること
  • ソーシャルローフィング(social loafing) : 大集団の一員になると,自分の責任感が希薄になる
  • 行為者ー観察者バイアス
    • 自分の行動の原因は外的な環境にあると思いやすく,他人の行動の原因は彼らの内面に求める
    • 他人を観察するだけだとどうしても,他人がどれほど環境要因に苦しめられ,そこを切り抜けようともがいているかが見えにくい
  • 状況対応理論(SL理論)