謎の会社,世界を変える.エニグモの挑戦
- 作者: 須田将啓,田中禎人
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2008/03/14
- メディア: 単行本
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ここ数年漠然と考えてきた事が,この本の中には現実として書かれていた.あまりにもバチッときちゃったので正直びっくりしている.
バイマ,プレスブログ,フィルモ,ローミオ,シェアモという5つの世界初のサービスを連発する会社「エニグモ」の起業物語である.同社の代表取締役共同最高経営責任者,須田氏と田中氏は博報堂を辞めてエニグモを起こした.物語は,田中氏の「すごいことを,思いついた」から始まる.2人は会議室でアイデアをどんどん練り上げていく...発端はよくある話なんだけど,それがどうしてここまで発展していったかというところに,本書のエッセンスが詰まっている.
僕が感じたそのエッセンスとは,「ビジネスにするセンスが抜群」だということ.実際,アイデアはずばぬけて斬新というわけでもなく,使っている技術がすごいわけでもない.
本書には,同じような内容が何度も書かれているが,
「アイデアだけではどうにもならない.それを具体化できるかどうか,実現できるかどうかが重要なんだ」
ということだ.
エンジニアがいないとスピードが出せないといったリスクがある反面,エンジニアのエゴが優先されてビジネスロジックが屈曲してしまうことがないというメリットもある.
アイデアからすぐに収益性を加味したビジネスモデルを考え,企画書を起こしプレゼンする.マーケティングやPRのノウハウなどは,博報堂出身という,いわゆるスーツ的な要素が有利に作用したと思われる.エンジニアだけだとココが非常に弱い.でも一人で全部やらないといけない場合,スーツがエンジニア領域をカバーするのは難しいが,エンジニアがスーツの領域をカバーすることはわりと可能だと思う.
冒頭で書いた漠然と考えてきたことというのは...例えば,バイマに近いビジネスモデルを考えていたこと,シェアモは某WGでK氏が提案していたアイデアそのもの,そして,フィルモはちょっと違うが動画広告について似たアイデアがあること,などだ.メモにも書いたけど,「俺もそういうの考えてたよ」と言うのは負け惜しみでしかない.サービスを作れるエンジニアのメリットをもっともっと生かさないといけないなぁと思うと同時に,ビジネスについても勉強/行動せねばと強く思った.
ギークレスのIT企業として,今後の動向が注目される.
バイマ
- 個人の力を,インターネットを使って増幅すること.
- その人にしかない「価値」を世界中の人々と交換できる仕組みを作ること.
- リアルタイムでその場所にいることが価値になる.
メモ
- 「楽しい仕事をしたい」「楽しい会社を作りたい」と理想を言っても「結局ビジネスとしてうまくいかないと,楽しさってありえないな」ということを,すごく実感した.
- 「アイデアだけではどうにもならない.それを具体化できるかどうか,実現できるかどうかが重要なんだ」
- 世界初の何かが誰かの手で生み出された後で,「俺もそういうの考えてたよ」と言っても何の意味もない.ビジネスモデルとして完成させる能力,それを実現させる実行力.そしてスピードが大切だ.
- 新しいビジネスを考える上で,いつも世の中の「あるべき姿」とか,「現状は間違ってないだろうか」という視点を考えるようにしている.
- 今ある何と何を組み合わせれば,その問題を解決することができるかを考える.そこから先はどう見せていくか,どういうコンセプトいすれば今受けるか,時流に合った演出を考えていく.