ライフサイクルイノベーション

ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション

ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション

企業活動の一部分しか担当しないエンジニアであっても,本書のような視点は非常に重要だ.技術革新とコモディティ化のスピードが驚異的な分野に携わる場合はなおのことである.

商品/サービスのあらゆるライフサイクルにおける,14種類のイノベーションを紹介.イノベーションの選択を考える上で,コア/コンテキスト,ビジネス・アーキテクチャという概念を混同するなと注意している.

最も重要なのは,イノベーションを起こす障害を取り除くこと.「コンテキストから資源を抜き出す」で述べている.大企業で陥りがちな誤りも言及されていて,納得である.

本書は企業経営について書かれているのだが,自分の身の回りの事例に落とし込んで考えると非常に興味深いと思う.自分の部署はどうか,自分が従事しているプロジェクトはどうか.さらに自分自身に当てはめて考えることを強くおすすめする.自分のスキルはライフサイクルのどこに位置するのか,コアであり続けるためには….

用語が多数でてくること,訳が若干わかりづらい,事例が多すぎる,など読みづらさは否めないが,内容は極めて多岐にわたり体系的に網羅されており,手元に置いておきたい1冊だと思う.

メモ

概要

  • 驚異的なスピードでコモディティ化する世界において競合優位性を作り出す方法
  • イノベーション」と「慣性力」,両者に平行的に対応していくことが必要
  • 「コンテキスト」の経営資源を継続的に「コア」に再配分するしくみ
  • そのしくみが「慣性力の管理」
  • イノベーションの効果
    • 差別化,生産性向上,中立化,そして浪費
      • 市場要求以上のものに資源を投入してしまい「必要にして十分」の目標を超えてしまう
      • イノベーション・プロジェクトが当初の目標を達成したにも関わらず,市場における競合優位性が得られなかった

ライフサイクル

カテゴリー成熟ライフサイクル
  1. テクノロジー導入ライフサイクル
  2. 成長市場
  3. 成熟市場
  4. 衰退市場
  5. ライフサイクルの終わり


テクノロジー導入ライフサイクル
  1. 初期市場
  2. キャズム
  3. キャズム越え
  4. ボーリングレーン: ニッチ市場の連鎖的な触発
  5. トルネード: キラー・アプリケーション登場し標準へ.一気に参入
  6. メインストリート: 市場シェア順位確定


コアコンテキスト分析

  • コア
    • 差別化を作り出す企業活動.
    • 顧客の購買意思決定における決定要因となる.
    • コアにおいてはイノベーションが重要な役割を果たす.
  • コンテキスト
    • コア以外のすべての企業活動.
    • 重要ではあるが,差別化の源泉ではない.
    • 慣性力を扱う場合には重要な位置を占める.
  • コアはいつかはコンテキストに変化する.自由競争市場では必然的な流れ.
  • 下りのエスカレータを上っているようなもの
  • コンテキストから得られる結果は,「不可」か「可もなく不可もなし」.その結果,プロセスを管理するマネジャーは次第にリスク回避型になっていく.

ビジネス・アーキテクチャ

  • コンプレックス・システム
  • ボリューム・オペレーション
    • 標準化された製品と商品取引により大量販売市場でビジネス
    • コンシューマ(一般消費者)向けビジネス
  • 両者は市場での地位は180度の位相差で周期的に進化している
    • コンプレックス・システムが新しい市場を切り開き,ボリューム・オペレーションがコモディティ化するというスパイラル


イノベーション

製品リーダーシップ・ゾーン顧客インティマシー・ゾーンオペレーショナル・エクセレンス・ゾーンカテゴリー再生ゾーン
破壊的製品ライン拡張バリュー・エンジニアリング自立再生
アプリケーション機能強化インテグレーション企業買収再生
製品マーケティングプロセス収穫・撤退
プラットフォーム顧客エクスペリエンスバリュー・マイグレーション

イノベーション選択のプロセス

  1. イデアを広める:イノベーションタイプの勉強会
  2. ポートフォリオの分析:自社の製品,サービスの分析.ライフサイクル,差別化,イノベーション
  3. ターゲット市場カテゴリーの分析:ビジネスアーキ視点,自社,他社視点
  4. 検討対象のイノベーションタイプを絞る:市場成熟度,他社,コアコンピタンス
  5. 優先的な選択肢を推進:ランク付け,ブレスト,行動計画,財務分析
  6. 主要なイノベーションのベクトルを選択
  7. 企業全体を参画させる:企業トップの責任

コンテキストから資源を抜き出す

  • コア・コンテキストフレームワーク: 差別化とリスクを軸とした4象限モデル
    1. 発明:非ミッション・クリティカル・コア:
    2. 展開:ミッション・クリティカル・コア:
    3. 管理:ミッション・クリティカル・コンテキスト:
    4. オフロード:非ミッション・クリティカル・コンテキスト:


  • 「展開」の資源不足が問題.原因は「管理:ミッション・クリティカル・コンテキスト」に資源が滞留してしまうこと
  • トップから現場までのあらゆるマネージャに見られる誤り:ミッション・クリティカル性とコアの混同である.
  • 四半期の業績を追及するあまり,コアを犠牲にしている
  • コアとは競合上の差別化の推進要素だ.将来の財務目標を達成するためのもの.
  • 上記フレームワークの逆方向に資源リサイクルを行う