これから何が起こるのか
- 作者: 田坂広志
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/11/23
- メディア: 単行本
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チープ革命,集合知,オープンソースなどWeb2.0のもたらす意味は「ウェブ進化論」「フラット化する世界」,知的プロフェッショナルについては「ヒューマン2.0」,知的プロフェッショナルはやがてアーティストになることは「ハイコンセプト」,ブログマーケティング,バイラルマーケティングについては「次世代ウェブ」「テレビCM崩壊」で述べられていることと重なってくる.
特徴的なのは,本書はWeb2.0の及ぼす範囲を「市場」「企業」「ビジネス」「戦略」「マネジメント」「働き方」「生き方」と実に広範囲に網羅している点である.著書も多岐にわたり多数出版されており,その集大成,目録的な要素があると思われる.
本書で,「Web2.0革命」まさに「これからどう変わっていくのか」といった概要を網羅的に把握してから,興味を持った分野をさらに探求していくのもよいのではと思う.
メモ
- 「情報革命」とは「情報の在り方」の革命のこと
- 「Web2.0革命」は「情報革命」を大きく進化させ,「資本主義の基本要素」を進化させ,「政治」「経済」「社会」「文化」の在り方を根本的に変えていく.そして,我々の「働き方」「生き方」が変わる.
「情報革命」で何が起こるのか
- 劇的な「権力の移行」が起こる
- 「ハイテクで大騒ぎをして,ローテクが売れる」「忘れられてからが,ビジネス」
「市場」で何が起こるのか
- 「顧客中心」とは抽象的な「精神論」ではなく,具体的な「戦略論」
- 「オンリーワン商品」が新たな常識
- 顧客が価格を決め,マーケティングを行う
「企業」で何が起こるのか
- 「ニューミドルマン」は企業ではなく,顧客/消費者の方を向いてビジネスをする
- 「販売代理」→「購買代理」
- 「ニューミドルマン」はさらに「コンシェルジェ」へと進化
- 「メタ・プロシューマ」:プロシューマ(生産消費者:進化した消費者)を支援する中間業者
- 消費者とともにコミュニティを形成し,消費者の立場で声や意見を聴く能力
- 消費者の声や意見を具体的な商品開発の企画にまとめる能力
- 消費者のコミュニティを背景に,商品開発を企業に提案し,実現する能力
- 「プロシューマ型開発支援ビジネス」は今後伸びていくビジネス
- ブログやSNSは,まだ「情報サービス」「コンテンツサービス」にとどまっている.これがメーカなどの「開発ビジネス」に広がる必要がある
「ビジネス」で何が起こるのか
- 購買支援ビジネスモデル
- ワンテーブルサービス:特定ジャンルの競合商品が対象
- ワンストップサービス:特定ニーズに関するすべての商品とサービスが対象
- ワンツーワンサービス:1対1のサービス
- 購買支援ビジネスモデルは,「個人」から「法人」へ
- オークション,ギャザリング,Q&Aサービス.「若者のお遊び」とも思えるビジネスモデルが市場構造を根本から変えてしまう可能性
- 購買支援から生活支援:「ライフスタイルの提案」
- 企業は,顧客のことを良く知らない
- 問題は,顧客調査が「自社の商品の視点」から行われていること
「商品」で何が起こるのか
- 「差別化商品」ではなく「差別化商品生態系」.つまり単独の商品で差別化ではなく,商品生態系の全体で差別化
- 「市場シェア」ではなく「商品生態系の全体」
- 「結果」に過ぎない「市場シェア」を目的にしてしまい,その数値を高めるために,大量のマスメディアでの広告宣伝を使ったマーケティング.大雑把にならざるをえない.消費者をひと括り.
- 「商品セグメント」「市場シェア」という大雑把な指標だけに囚われることなく,顧客の細やかなニーズの動きを見つめ,それにともなう様々な商品の動きを見つめる「生態系的思考」が求められる.
- iPodは商品のイノベーションではない.商品生態系のイノベーション.
- 「目に見えるコミュニティ」から「目に見えないコミュニティ」.ブロゴスフィア(ブログ圏)
- ブログ・ウォッチング:データマイニングならぬテキストマイニング★
「マネジメント」で何が起こるのか
- 「データ・マネジメント」→「ナレッジ・マネジメント」→「ノウハウ・マネジメント」→「マインド・マネジメント」
- 低価格競争の極限→高付加価値へのリバウンド
- 「ナレッジ・サービス」→「ノウハウ・サービス」→「マインド・サービス」
- 「ナレッジ・サービス」:株価分析,市場予測などの知識提供サービス
- 「ノウハウ・サービス」:資産運用ノウハウのFPからのアドバイス
- 「マインド・サービス」:シニア・コンシェルジェ
- 「異業種のナレッジ・マネジメント」:多面的で深みのある,全体性をもった「顧客像」「顧客のライフスタイル像」
- 顧客の知恵を借りる
「知識社会」で何が起こるのか
- 「知識社会」とは「知識」が価値を失っていく社会
- 「求められる人材」から「活躍する人材」へ
- 「専門的な知識」→「職業的な知恵」=「職業的な技術」と「職業的な心得」
- 知識社会において活躍する人材とは「知的プロフェッショナル」
- 自分のことを「労働者」と思っていない
- 時給で仕事をしている限り労働者.「時間」ではなく「成果」で報酬を得る
- 自分のことを「商品」とは思っていない
- 自分の仕事を「作品」と思っている
- 「目に見えない報酬」を求めて仕事をする
- 自分の「個性」を大切にした仕事をする
- 自分のことを「労働者」と思っていない
- 「プロフェッショナル」は「アーティスト」へ進化
「資本主義」で何が起こるのか
- 企業にとっての人材が「ストック」から「フロー」へ
- リクルートは40歳で独立し,OB/OG会が,「市場調査部」「戦略企画室」「新規事業開発部」→「異業種連合」
- 知識資本を増やすためには,5つのメタレベルの資本を増やす
- 知識資本,関係資本,信頼資本,評判資本,文化資本
- 「収益」戦略よりも「収穫」戦略が重要
- マネーリターンではなくナレッジリターン
- 知識収穫,関係収穫,信頼収穫,評判収穫,文化収穫
- マネーリターンではなくナレッジリターン
- 知識資本には「収穫逓増」が起こる
- 収穫逓増とは,複雑系の経済学「ある現象が,ひとたび起こり始めると,それがますます起こりやすくなり,その現象が加速度的に増大していく」
- 「知識管理」の戦略は「知識創発の戦略へと進化
- 顧客との共感:顧客の共感を得るではなく顧客に共感する