リクルートのDNA
リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)
- 作者: 江副浩正
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 新書
- 購入: 17人 クリック: 209回
- この商品を含むブログ (119件) を見る
iモードの生みの親、松永真理氏。Gyaoが話題のUSEN社長、宇野康秀氏。都内の公立中学校で初の民間出身の校長として話題となった、藤原和博氏。トレンダースの美人社長、経沢香保子氏。ゴールドクレスト社長、安川秀俊氏。評論家の立花隆氏 …。
リクルート出身の起業家が多いことは有名です。みな40歳前後で独立し、ただ独立するだけでなくOB/OG会がそのまま,「市場調査部」「戦略企画室」「新規事業開発部」→「異業種連合」 として強力に活動しているのです。(「これから何が起こるのか」/田坂広志 より)
なんでなんだろうと漠然と思っていたところに、いいタイミングで本書が発売されました。
前半は、企業風土や成功する起業家の条件について、ご自身の経験をもとに書かれています。直接影響をうけた名起業家たちのエピソードなどは、まさに現代の超一流の名経営者達が名を連ねています。後半は、リクルートの創業期から、起業家を輩出するようになった風土の形成、そしてビジネスの拡大の歴史が描かれています。
江副さんは自身のことを、プレゼンが苦手であったとか、リーダーとしての点数はさほど高くなかったなど、「私は凡庸な人間である」と評していますが、「経営の三原則」や「企業理念とモットー」を読む限り、そんなことは決してないと感じます。戦後もっとも起業家を輩出してきたリクルートのDNAは、やっぱり江副さんのDNAそのものなのだということがよくわかります。
「商売の勉強ができる会社」という起業家意識で入ってくるリクルートの新人は、終身雇用にどっぷり浸かったサラリーマンとは全く違う目的意識をもって行動するわけですから、結果も当然違ってくるわけですね。そういう文化なんですね。本書を読むとそういった文化の一部を垣間見ることができ、また非常にやる気がでてきます。
メモには、各項目のみ箇条書きしましたが、背景を含めて深く理解するには本書を読まれることを是非おすすめします。
メモ
経営理念とモットー
- 誰もしていないことをする主義
- 分からないことはお客様に聞く主義
- ナンバーワン主義
- 社員皆経営者主義 - 企業家の集団
- 社員皆株主
- 健全な赤字事業を持つ
- 少数精鋭主義
- 自己管理を大切に
- 自分のために学び働く - 遊・学・働の合一を理想とする
- マナーとモラルを大切にする
マネジャーに送る十章
- 希望・勇気・愛情
- ネットワークで仕事をすること
- 高い給与水準
- 人は仕事を通じて学ぶ
- プレイングマネジャー
- まず周囲に自らを語ること
- 数字に強いこと
- 努力の継続
- 脅威と思われる事態の中に隠された発展の機会がある
- リクルートは社会とともにある
成功する起業家の二十ヵ条
- 一人では大きな事業はなし得ない
- 人がついてくることが大事だが、そのためにはまず自らを磨くこと
- 企業は人なり
- 創業者利益が得られる事業
- 変貌している産業社会の新しい要請に応える事業かどうか
- 多くの資本を要さない仕事から出発
- 人に平等にあたえられたものは時間
- 失敗を恐れぬ勇気をもつ
- 若くかつ就職しないで起業すること
- 大学の成績や学歴は関係ない
- 経営哲学を社員と共有すること
- コミュニケーション能力を高めること
- 優れた経営者は話し上手であり、かつ聞き上手である
- 起業家に求められるものは倫理観である
- 常に健康に留意する
- 経済と政治は密接に関係している
- コアビジネスとして1つの事業に専心する
- 一つのものを二にも三にも拡大して活用できる経営資源は人的資源である
- 自分の考えは正しいから必ず成功するというところから出発するが、それが正しいかどうかを決めるのは顧客である
- 若くなくても起業して成功を収めた人はいくらでもいる
気になったフレーズ
- 二位となるのは「死」である
- 「為さざる罪を問う」
- 「教えることを通じて人は学ぶ」
- 「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
- 「事業計画を書き、それを人に見せて人の意見や助言を聞くこと」
- 会社のなかに会社をつくる。PC制(プロフィットセンター)。組織は「ピラミッド型」ではなく「グリッド型」。アメーバ経営と似ている。
- リクルートでは一人数役。兼務は5つ、6つはざら。少数精鋭。いくつもの役割を担当することで視野が広がり、仕事の優先順位も覚えるようになり、経営者が育つという考え方
- 上司からメンバへの評価のフィードバックに極力多くの時間を割く
- ステップ休暇:3年毎に1ヶ月の長期休暇と1ヶ月分の手当てを支給。海外をみて視野を広げてほしい。
- 「よく働き、よく学び、よく遊ぶ」というリクルートの社風
- 「経営への提言」という社内懸賞論文
- 起業はボトムアップ、撤退はトップダウン。毎年新規事業の提案を募集。100件中2,3件が事業化。
- 50歳前にほとんどの人が「卒業」(退職とはいわないそうです)