プロマネはなぜチームを壊すのか
プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル
- 作者: 伊藤健太郎
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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壊れたチーム,あるいはチームが壊れるとは,どういうことをいうのか.プロマネの責任と権限とは一体なんなのか.チームとはなにで,よいチームをつくるためにプロマネは何をすべきか.プロマネの持つべき人間力とはなんなのか.
これらの疑問に完璧に答えられる人には不要の本かもしれません.技術やプロセスではなく人間をテーマにしているので,経験豊富なプロマネにとっては当たり前と言ってしまえばその通りかもしれません.
しかし,プロマネ初心者やチームメンバーの人にとっては,きっと面白い本だと思います.なぜなら,現場にゴロゴロしている,まさに「あるある」的な問題についてたくさん語られているので,すぐに自分の事として捉えられるからです.
僕ももちろんとても面白く読めました.同じような問題が自分の関わるプロジェクトでも起きているときに,どこに問題があるのか,(どこにとはプロマネなのかメンバなのか組織なのかということ)が非常に明確になるからです.そしてどこをどう直していけばよいかもよくわかります.
本書を読んで,自分を改善していくか,もしくはあなたのプロジェクトのプロマネを改善してあげましょう!チームが壊れる前に!
メモ
プロジェクトマネジャーの責任
- 文書化されたものだけが責任範囲ではない
- 責任はその人の内面に存在する
- どこまで責任があるかというのは本人の認識であり,優秀なマネジャーと凡庸なマナジャーの差はここにある
- プロジェクトマネジャーは,結果に対して責任があるゆえに,プロセスに対しても正しい行動をとる責任がある
プロジェクトマネジャーに重要なのは「戦略的」視点
- 戦略的視点とは,複数の選択肢の中から,目的にとって最善と考えられる選択肢を選んで実施する,判断力を意味します.
プロジェクトマネージャーの権限
- 公式のパワー:組織が与える肩書き・地位.情報力.
- 非公式のパワー:自ら獲得するリーダーシップ・実務能力等
プロジェクトチームの本質
- プロジェクトチームはプロジェクトの目的を達成するための手段といえます.したがって,チームは決して固定して考えるものではなく,プロジェクトの目的を達成できるように作り上げるものなのです.
- チーム編成で考慮すべきこと
- プロジェクトチームの目的は何か
- プロジェクトの成果物は何か
- プロジェクトの戦略的重要性はどのくらいか
- プロジェクトのサイズと複雑性,新規性はどのくらいか
- どこでプロジェクトが遂行されるか
- どのようなスキルのメンバーが必要なのか
- チーム以外の組織とどのような関連があるか
- チーム運営で考慮すべきこと
- プロジェクトメンバーの役割と責任範囲
- プロジェクトの成功と個人の成功
- チームパフォーマンスの測定方法・タイミング
- チームのインセンティブ
- プロジェクトの進行に伴うチームの役割の変化
信頼
- 3つの信頼
- 個人的信頼: 正直,約束を守るなど高い倫理観
- 専門的信頼: 専門性があり,自分の見解を確かな情報で裏付けできること
- 構造的信頼: 個人的な目的や利害の影響のない人,中立的な立場の人であること
- 信頼を築くためには,責任を明確に説明する必要がある
- 障害やリスクを説明する責任はメンバーにある
- 「やります」と言いながら何度も約束を破ることは責任の欠如
- 責任範囲と作業範囲の違いを意識する
- プロジェクトマネジャーは「あなたの作業は何です」と指示するだけではなく,「あなたは○○について責任があります」と話すべき
モチベーション
- マクレガーのX理論・Y理論
- マズローの欲求5段階
- ハーツバーグの意欲要因・環境要因論
- ロックの目標設定理論
ハイパフォーマンス・チームの特徴
- プロジェクトが計画通りにコントロールされている
- チームの目的,目標が明確に共有されている
- 成果志向での行動
- 自分のことよりもプロジェクトの目標達成を優先させる
- 仕事に対する責任感がある
- メンバー間に信頼関係がある
- メンバー間の相互依存がある
- 躍動感がある
- 情熱がある
- ユーモアがある
- 行動が迅速である
チーム形成過程
- Forming(チーム形成)
- プロジェクトの目的・メンバーの役割・依存関係のの明確化
- 環境・ルール作り
- Storming(嵐の状態)
- メンバー間の違い・コンフリクトの明確化と相互理解,
- メンバーと向き合って,本質的な問題解決を心がける
- Norming(規範)
- 結束,帰属意識
- メンバーが能力を最大限発揮できるようにサポート
- Performing(高パフォーマンス)
- チームの効率化をサポート
- 自発性重視
- Adjourning(解散)
- メンバーの不安解消
チームビルディング
- 個人の集合(自分中心) → グループ(非自発的) → チーム(相互依存&自発的)
プロジェクトチームの文化
- これもプロマネの重要な仕事.たとえば
- 信頼,チームワークに大切な価値観を置く
- 個人ではなく,チーム業績を最大にするように努力する
- 勤務場所などを固定しないで,パフォーマンスが上がるところで作業を実施する
- プロジェクトの成果達成のために自由な発想を行い,誰も「不可能」などとは言わない