実践プロジェクトマネジメント
CD‐ROM付 目標を突破する 実践プロジェクトマネジメント
- 作者: 岸良裕司
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2005/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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TOCに基づき全体最適という視点に立ったプロジェクトマネジメント手法,CCPM(Critical Chain Project Management:クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)の実践的な手法を説明した本です.
TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)とは,70年代にイスラエルの物理学者 エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した経営管理手法です.「工場の生産性はボトルネックの生産性を超えることはない」というシンプルな原理に基づき,その制約条件にフォーカスすることで,最大限のスループット(利益)をあげることを目的とするものです.『ザ・ゴール』という有名な著書で,ビジネス小説として詳しく描かれています.
本書はなによりも,図や語句説明が豊富で非常にわかりやすい.上記のような理論など一切知らなくてもまったく問題なく理解できます.従属性と変動性という不確実性の高いプロジェクトマネジメントに対して,非常に科学的な手法CCPMはその本質を理解すれば,すごい効果を発揮します.実際僕もサバ取りやプロジェクトバッファは使っています.
詳しい内容は本書を読んでいただくとして,CCPMを実践するうえで,絶対に覚えておきたい8つの質問です.コーチングとしても効果がありそうな非常に強力な質問です.
- 「目的はなんですか?」
- 「成果物はなんですか?」
- 「この直前に行うことはなんですか?本当にそれだけですか?」
- 「本当にギリギリ納期ですか?」
- 「あと何日かかる?」
- 「もし,問題があるとしたら何がある?」
- 「それは事実ですか?」
- 「それはなぜですか?」
本書にも書いてありますが,TOCの原理って優秀なプロジェクトマネジャーや親方は特に意識することなく実践していることばかりです.いわゆる「暗黙知の集大成」なわけです.本書はその暗黙知をとても明解に説明してくれるので,形式知にすることができます.ほんとスゴ本だと思います.
納期が遅れる6つの理由
- サバを読む納期
- 予算と時間をあるだけ使う(パーキンソンの法則)
- 一夜漬け(学生症候群)
- 遅れは伝播する
- 早く終わっても報告しない
- 作業の掛け持ち(タスクディスパッチ時間)
従属性と変動性
- 従属性: 直列的・並列的,いずれも遅れが伝播し,早く終わってもそれは伝播しない
- 変動性: 仕事の「バラツキ」,突発的トラブル,(不確実性)
プロジェクトの達人による「納期厳守の鉄則」
- 現場担当にはサバは読ませない
- サバは親方が管理する
- 1つの仕事に集中する
- タイミングを見て施工を進める
- 現場でのゼニ勘定を忘れない
- 重要な工程に集中する
辣腕親方の工程表の作り方
- リソースの重複をなくす
- サバ取り
- 各タスクから出てきたバッファをまとめて親方に渡す
- 納期を決める
全体最適
リソースの重複をとり,工期を決めているもっとも長いパスのことをTOCでは「クリティカルチェーン」という.サバ取りでは,クリティカルチェーン上のタスクを「できるかできないか五分五分の工期」に詰める.そして各タスクから捻出されたバッファをプロジェクトバッファ(親方バッファ)として共有する.
ここで,大事なのは全体最適という考え方(TOC的な考え方)である.部分部分の最適化は必ずしも全体の最適化にはならない.ボトルネック(制約条件)を解決することに集中し,プロジェクトを鎖(チェーン)としてみることが大事である.
プロジェクトバッファ
プロジェクトの不確実性をすべて集めた場所であり,これを管理する.
合流バッファ
クリティカルチェーンに対して合流するタスクには合流バッファを設ける.
進捗管理
- 進捗率(90%)ではなく,「あと何日」で管理する
- 段取りを考える訓練にもなる
ODSC
- Objectives (目的)
- Deliverables (成果物)
- Success Criteria (成功基準)
科学的段取り八分
- 目的からさかのぼって議論をしていき,目的を達成するための作業や成果物を決めていく
- 「その直前にやることは何ですか?」
- 「本当にそれだけですか?」
プロジェクトの害虫
- サバよみ虫
- パーキンソン虫
- 一夜漬け虫
- ていねいな仕上げ虫
- マルチタスク虫
- くれない虫
- べき虫