戦略「脳」を鍛える

戦略「脳」を鍛える

戦略「脳」を鍛える

BCG(ボストン・コンサタルティング・グループ)日本代表 御立尚資氏の戦略発想・思考の本です.

いわゆるポーターのような経営戦略の定石を学ぶことは「イロハのイ」に過ぎず,定石・定跡を知ったうえで,新しい考え方をつくりあげる「プラスアルファの能力」が,勝てる戦略には必要だと述べています.

この能力こそが,本書のテーマとなる,インサイト(Insight)」です.「直感」や「洞察力」といった意味ではなく,「勝てる戦略の構築に必要な”頭の使い方”,ならびにその結果として得られる,”ユニークな視座”」という表現で説明しています.

式で表すと,こうなります.

戦略論プラスアルファを生み出す技 = インサイト
ユニークな戦略 = 定石 + インサイト

さらに,インサイトを掘り下げると

インサイト = スピード + レンズ
スピード = ( パターン認識 + グラフ発想 ) × シャドウボクシング
レンズ   = ”拡散”レンズ + ”フォーカス”レンズ + ”ヒネリ”レンズ

因数分解できます.

つまり,ゼロベースではなく,定石や経験からなるいくつかの戦略フレームワーク(戦略論のエッセンス)から考えることで思考を効率化し,データ等をプロットしたグラフを用いることで,さらにイメージで思考するということです.ポイントは,左脳の戦略フレームワークと右脳のグラフ発想を組み合わせることで,思考の劇的な高速化が可能になるところです.そして,左脳と右脳をフル活用して仮説を生み出し,その検証を繰り返し行うことをシャドウボクシングと呼んでいます.

注意すべき点は,グラフ発想では,平均値で考えるのではなく,「脱平均」して考えることだそうです.平均化されたグラフは必ずしも実態を表したものではないため,特異点などを見過ごす危険があるからです.

「レンズ」とは,ユニークな戦略を具現化するために必要な「モノの見方」で,本書では,「拡散」,「フォーカス」,「ヒネリ」という3つのレンズを紹介しています.

全体像を表す公式は次のようになります.

ユニークな戦略 = 戦略のエッセンス
                   + ( パターン認識 + グラフ発想 ) × シャドウボクシング
                   + ( ”拡散”レンズ + ”フォーカス”レンズ + ”ヒネリ”レンズ )

本書は,ユニークな経営戦略を発想・思考するための本ではありますが,どんな場面でも活用できますし,純粋に思考の本としても楽しめます.概してこの手の本は難しくなりがちですが,本書は非常にわかりやすいです.

メモ

戦略のエッセンス: コンセプトワード

  • コスト系
    • スケールカーブ
    • エクスペリアン・カーブ(経験曲線)
    • コストビヘイビア
  • 顧客系
    • セグメンテーション
    • スイッチングコスト
    • ロイヤリティ
    • ブランド
  • 構造系
  • 競争パターン系
    • ファースト・ムーバー・アドバンテージ
    • プリエンティブ・アタック
  • 組織能力系

レンズ

  • 拡散
  • フォーカス
    • ユーザーになりきる
    • テコを効かせる
    • ツボを押さえる
  • ヒネリ

参考文献

戦略市場経営―戦略をどう開発し評価し実行するか
BCG戦略コンセプト
企業参謀―戦略的思考とはなにか
競争の戦略
競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか
新・経営戦略の論理―見えざる資産のダイナミズム
知識創造企業
タイムベース競争戦略―競争優位の新たな源泉 時間
MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術