アンビエント・ファインダビリティ / Peter Morville

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

どんなに有益な情報がネットワーク上に存在していたとしても、ユーザが見つけることができなければ、何の意味もありません。その「見つけやすさ」を表す新しい考え方が「ファインダビリティ」です。また、「アンビエント」はブライアン・イーノの「アンビエント・ミュージック」に触発された言葉で、無線ネット接続、モバイル機器、GPSRFIDなどの技術によって可能になった、いつでも、どこでも、誰でも(モノであっても)、ネットワークに接続可能な世界を表しています。
本書は情報アーキテクチャの第一人者である著者が、「見つけること」に関する技術の歴史、情報に関する先人の研究、ネット上の新しい動き(ロングテールタギングなど)、自身の個人的な体験をもとに、「ファインダビリティ」とは何か、ネットワークが「アンビエント」になりつつある世界で、われわれはどこへ向かっているのか、を考察する意欲的な書籍です。ウェブの制作、ビジネスに関わる方に新しい視点を提供します。
O'REILLYより

本書は,いわゆるWeb2.0を説明するものでもなく,Web2.0的な技術に関するものでもありません.読み物,またはエッセイ集といった趣がありますね.読んでいる最中は,情報アーキテクチャについての文献/情報群の中を過去から未来へと旅しているような感覚でした.

僕らは,玉石混合の膨大な情報の中で日々生きているわけですが,今後もそれは指数的に増加していく事は確実です.Googleが取り組んでいることは,情報の組織化/構造化なわけですが,それが最終解なのかというと決してそうではないと思います.検索に限って言えば,Googleでさえユーザビリティにもまだまだ向上の余地がありますし,ユーザエクスペリエンスに至っては皆無ですよね.言ってみればただの道具にすぎないわけです.何が言いたいのかというと,まだまだ僕らにできること/やるべきことがある,ということです.

個人的には,Googleのその先を考えたり,Webアプリを作ったり,新しいビジネスモデルを構築する上で,本書から有益なヒントをたくさん得られた気がします.

メモ

カルヴィン・ムーアズの法則
  • 「ユーザにとって情報を持たないことより持つことのほうがより苦痛で面倒であるときには必ず,情報検索システムが利用されにくくなる傾向が見られるであろう.」
  • ムーアの法則(ICの集積度に関する法則)と人間の脳は全く異なる
情報検索
  • 適合性(relevance)
  • 適合率 = 検索結果内の適合データの数 / 検索結果データの総数
  • 再現率 = 検索結果内の適合データの数 / 実際の適合データの総数
    • 再現率は,データの母集団のサイズが大きくなるにつれて劇的に低下してしまう
言語のあいまいさ
  • ベル曲線 : 自然現象が従う
  • べき法則 : 自己組織化と創発的行動がみせる複雑系ネットワークにみられる
  • アバウトネス(それが何についての情報なのか)をソフトウェアが正確に決定できる方法はない
最小労力の原理(ジョージ・キングズリー・ジップ)
  • 「各個人は,自身の最も少ない平均仕事量(定義上「最小労力」と呼ぶ)を費やせばよい一連の動作を採用する傾向にある.」
  • デスクトップにGoogleがあれば,図書館には行かない
情報採餌理論(Jacob Nielsen )
  • ミーム(meme) : 文化的遺伝子,口コミなどはミームにより説明できる.
ユーザエクスペリエンスのハニカム構造
  • 役に立つこと(Useful)
  • 使いやすいこと(Usable)
  • 望ましいこと(Desirable)
  • 探しやすいこと(Findable)
  • アクセスしやすいこと(Accessible)
  • 信頼に値すること(Credible)
  • 価値を生み出せること(Valuable)


セマンティックウェブRDF(Resouce Data Description)が不完全な理由
  • 大部分の情報システムでは,構造的メタデータ統制語彙の適用を許していないから
  • 共有可能な分類システムの設計は驚くほど複雑で,面倒で,コストがかさむから
フォークソノミー
ペースの多層化(Pace layering)
ネットワークの3種類の尺度
  • 活動性(activity)「コネクタ」
  • 媒介性(betweenness)「バンダリースパナー」
  • 近接性(closeness)「最短のルート」