ウェブは資本主義を超える / 池田信夫
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/06/21
- メディア: 単行本
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本書は「池田信夫blog」の集成ということですが,実は僕はこのブログあまり読んでいません.というのは,純粋に技術的な話ばかりではなく,政治や経済,社会,歴史に及んだ話題が多いからです.そもそも僕自身がそういった分野に非常に弱いからというのが本音です.
ブログというメディアは自分の都合で,読むエントリを取捨選択できるのが利点ではありますが,逆に本というメディアはある程度その取捨選択の制限を自分に課せられるという意味で,僕にとってはかなり利点であると言えます.Webはコストゼロですが,本はコストがかかるというのも利点といえば利点です.
正直,本書の内容には(僕個人の知識不足により)咀嚼できてない内容もあります.つまり自分の弱点がとてもよくわかります.
Web,放送と通信,TVといったメディアのみならず,著作権,既得権益,産業構造,国家政策と扱っている範囲は幅広く,技術というカテゴリを一段も二段も上から俯瞰した分析にもとづく批評はとても参考になります.かなり辛辣な物言いには賛否両論あると思いますが…(個人的にはズバッとした感覚が結構気持ちいいです)
まずは,池田先生のブログを精読することからはじめようと思います.
メモ
- 個人をプロセッサ,組織をネットワークと考え,情報処理コストと通信コストのどちらが相対的に高いかによってネットワークの構造が変わると考える.
- グーグルの限界は,静的なDBとUI.
- 2ちゃんねるから学ぶこと : 間違いをおかさないことではなく,ちょっとぐらい間違えてもシステム全体に影響が及ばない冗長性をもたせ,過渡的な間違いは許容することだ.それがインターネットのベスト・エフォートの思想である.
- サンクコスト(埋没費用:sunk const)の問題 : いま山間部まで地デジのインフラを建設することは,ジェット時代に青函トンネルを掘るのに等しい.
- 労働価格均等化定理 : 労働移動が自由でなくても,安い工業製品を輸入できれば,実質的に労働力を輸入することができるので,同じ製品をつくる労働者の賃金は国際的に均等化する
- イタリアのファストウェブ : オンデマンドで放送をネット再送信するシステム
- 製造業と情報産業の最大の違いは,リスク管理の性質
- 製造業:各工程の不良品リスクは掛け算
- 情報産業:モジュール化されているので,不良品リスクは足し算
つまり,製造業では,悪い因子を排除する(分散を最小化する)ことが重要だが,情報産業ではよい因子を排除しない(オプション価値を最大化する)ことが重要なのだ.日本のITゼネコンのように大組織にエンジニアを囲い込むと,不良品のリスクは最小化できるが,社内の稟議で突飛なアイディアは埋もれてしまう.とりあえずやってみて,失敗したらやめるということができないからだ.