ザ・ファシリテーター / 森時彦
- 作者: 森時彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2004/11/12
- メディア: 単行本
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一気に読んでしまいたくなる本.企業変革,ファシリテーションが物語になっているとこうも面白のかと.
日本ファシリテーション協会会長の堀公俊さんの研修を受けたこともありますし,「問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 (Best solution)」「ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法 (ファシリテーション・スキルズ)」という著書も読んでおり,自分なりに一通りファシリテーションについては知っているつもりでしたが,物語という全く違ったアプローチのファシリテーションは妙にリアルで,知ってるのとやってみるのとは大違いというのがわかってしまうような,そんな不思議な感覚を覚えました.行き過ぎると,実行したつもりになっちゃうということにもなりかねませんが.
「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」を読んだことがある方なら,この感覚わかって頂けると思います.
会議術やファシリテーションのような技法って,普段実際他の人がどう活用しているのか知りたいですよね.自分の組織の中の常識というか固定概念ってなかなか払拭できませんからね.その点,本書は他社を覗き見しているような感覚がおもしろさをいっそう引き立てているかなと思います.まあちょっとできすぎな部分があるのも否めませんが.笑
なかでも,主人公 黒澤涼子(通称リョウ),この人めちゃめちゃカッコいいです.名前からしてデキそうでしょ.僕もこんな切れるマネージャになりたいと思っちゃいます.
「彼女のリーダーシップには,人の行動を変えてしまうところがある.それまで言われたことだけをしていた社員が,自分で全社のことを考え,言われなくても自らドンドン知恵を出して行動している.その変化は,彼女がいなくなった後のマーケティングでも続いている.山本君がいい例だ」
なんて,社長もベタ褒め.
物語の柱をなしている技法は,「問題解決ファシリテーター」と「GE式ワークアウト」の2冊により詳しく書かれており,合わせて読むとより理解が進むと思います.
メモ
気になったキーワード
- タックマンモデル
- 組織の進化モデル : フォーミング,ストーミング,ノーミング,アンド・パフォーミング
- ポイントは,ストーミングを省かないこと.
- 浮力の原理 : 「いつまでも愚痴ってても仕方ない.前向きの議論をしよう」と自らが思う
- GE式ワークアウト
- ひたすらストレッチする (ストレッチゴール)
- システムシンキングする
- 既成概念にとらわれない水平思考を促す (アウト・オブ・ボックス・シンキング)
- 本当の権限委譲と説明責任を生み出す
- 短サイクルでの変革とすばやい意思決定を手にする
- ジョハリの窓
- 自己開示とフィードバック
- SWOT分析
- 参加者の目線を上げ,会社の戦略的な課題に意識を戻せる
- 完成した表よりは,これを皆で作成するプロセスが重要
- 自分達で考えることにより,内発的動機づけになる
- パーキングエリア : 本筋からズレた発言の一時的な退避場所.
- アイスブレーク : 参加者のこころをほぐすもの
- タイムマシン : 1年後の改革が成功した世界をイメージすることで,ミッション,ビジョンをつくる手法
- アクション・オリエンテッド : できることに集中して,さっさっと決めて,アクションをとる.
- 発言を促す質問
- 全体を意識させる質問
- 分散(多様性)を意識させる質問.「いつもそうですか?」「平均ですか?分散はどうなってますか?」
- コントローラブル/アンコントローラブルを意識させる質問
- 時間軸を意識させる質問
- 基準を意識させる質問
組織変革
- 人の気持ちが続くのは90日.その間に改革を軌道に乗せられるかどうかが成功と失敗の分かれ道.
- 事業変革のジレンマ : 事業改革計画が承認されたら,それで終わり.「これでやっと本業に戻れる」
- 成功を定義すること.計測可能な形で(ダッシュボード・メトリクス).マイルストーンをつくって,小さな成果でも祝う.
- 実行におけるファシリテーションのポイントは,目標をノルマと感じさせず,チャレンジと思わせ続けること.「金メダルを狙うスポーツチーム」
コントロールできないことをぼやいていても何も変わらない.自分ができることに集中しよう.それによって,自分が直接コントロールできないものにまで,影響を与えることができる.
議論の過程で起こる化学変化を楽しむ心を覚えた.合意しようが,障害に乗り上げようが,そういうプロセスを,自分の気持ちを含めて,高い位置から見るメタ認知のようなものを,意識できるようになった.