なぜ上司とは,かくも理不尽なものなのか / 菊澤研宗
- 作者: 菊澤研宗
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2007/08/30
- メディア: 新書
- クリック: 20回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
ダメな組織,ダメな上司にも,それなりの立派な合理性があるという話.
完全合理性ではなく,限定合理性といわれるもので,これらを経営学や経済学で近年急速に発展してきている組織の経済学で示してみようというのが本書のテーマである.
いずれも,ノーベル経済学賞をとっている理論だそう.といっても,聞いてみれば確かにというもので,決して内容は難しくはない.ダメ上司の理不尽な言動は,ある意味では限定合理的な人間がもたらす必然の結果と捉えることもできる.これらを知っていれば,ダメ上司に対していくらか平穏な気持ちを保つことができるかもしれない.
いくつか例をあげると,
会社全体にとっては,いまやるべきでないような意味の無い事業計画を無理やりやろうとする管理職は,エージェンシー理論で説明できる.会社全体の利益など完全に無視して,個人的な成功や満足を追求しているといえる.
時代遅れでも,過去の成功体験にあまりに固執する上司は,取引コスト理論で説明できる.いままでの自分の多くの労力と時間の投資を「すてる」ことができないわけだ.もっと怖いのが,この成功体験が経済合理性を超えて,確固たる不変の価値観に変わってしまうこと.そうなるともうどうにも手がつけられない.
ワンマン体制下で部下たちが寡黙になっていくのも,取引コスト理論で説明できる.本音の意見をワンマン上司に受け入れさせるように説得するのは,それなりの交渉が必要だからだ.ムダな会議を下手に長引かせるより,上司に勝手にしゃべらせて,少しでも早く会議を終わらせたいなんて,よくある話だ.
最近,ダメな上司の使い方をよく考える.書店で衝動的に買ってしまったのだけど,なかなか納得感があっておもしろかった.この限定合理性をうまく理解してあげ,そこをあまり刺激しないように操作できれば解決策がみえるものもあると思う.