バランス感覚を磨く
プロジェクトマネージャ(PM)にとって最も大事な要素とはなんでしょう?
私はバランスではないかと思います.PMはビジネス的な要件や技術的な問題,人の問題,企業/組織の政治的な圧力,コスト…といった様々な問題/要件を扱います.多くのステークホルダ(利害関係者)を巻き込み,逆に巻き込まれ,コミュニケーションし,判断し,交渉/プレゼンすることでそれらを解決していきます.またリーダーシップを発揮し目指すべき方向を示し,自ら率先垂範して行動/実践することでメンバを引っ張っていくことが要求されます.プロジェクトは生ものです.特にソフトウェア開発は極めて複雑で知的作業です.多種多様な考えを持つ個性的な人達からなるチーム,一見すると無秩序に見える個人個人が,有機的に関係しあいながら1つのモノを構築していくという極めて難易度の高い共同作業なのです.時間とともにどんどん変化し,次々と新たな問題を発生させます.同じ問題でも時間軸ではその対処は当然異なります.つまり,多様な条件/制約,関係者,時間軸,効果とコスト,品質といったもののバランスを常に考えて問題に対処する能力/技術が必要不可欠なのです.
技術はできて当たり前
PMはまさにゼネラリスト的な能力が必要とされるわけですが,プロジェクトの管理だけをうまく行えばよいという勘違いを犯しがちです.技術的な問題はメンバに丸投げしちゃうPMをたまに見かけます.丸投げと委譲は全く違います.もちろんメンバのほうが技術に詳しいことは多々あるのですが,だからといってマネージャやリーダーは技術に無頓着でよいということにはなりません.スペシャリストであることはむしろ暗黙の前提だと思った方がよいです.そうでなければ見積りや進捗管理なんてできやしないのですから.
視点を変えると,PM自身の業務または思考に対してもバランスは非常に大切です.
『アート・オブ・プロジェクト・マネジメント』でScott Berkunは次のように言及しています.
プロジェクトマネージャは,こういった態度の存在に気付くだけでなく,適切な状況下で適切な態度を取るという本能を磨いておく必要があるわけです.そしてこういった考え方から,プロジェクトマネージャは芸術であるという考え方が生まれるのです.
逆にいうと,ミスをしたときはいずれかのバランスが崩れたときであるわけです.
参考文献
アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: Scott Berkun,村上雅章
- 出版社/メーカー: オライリー・ジャパン
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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