ピープルウェア

ピープルウエア 第2版 ? ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

ピープルウエア 第2版 ? ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

プロジェクト管理の権威トム・デマルコの「原点」.初版は1989年.第2版は2001年.多様な方法論,コード自動生成,フレームといった技術が次々と出てきてはいるが,いまだにソフトウェア開発は職人的で,かなりの部分がまだまだ属人的な分野だ.ソフトウェア工学とはいい難い.昨今の巨大なプロジェクトマネージメントでは,まさにこの「ピープルウェア」な考え/問題は避けては通れない.

プロジェクトマネージャはもとより,上級マネージメントに読んでもらいたい.ソフトウェア開発という非常に高度で繊細な知的作業を理解し,どうすれば本当の意味で生産性があがるのか,ということを「人間」という視点からマジメに考え直してもらいたい.

メモ

人材の活用

管理者のほとんどは,技術面より,人に気を配っていると思い込んでいる.しかし,本当にそうしている管理者は滅多にいない.

  • エラー大歓迎
    • 間違いを許さない雰囲気が社内にあると,チームの空気は重く沈む

早くヤレとせかせれば,雑な仕事をするだけで,質の高い仕事はしない.

  • これこそ管理者だ

シャロンは,優れた管理者の本質をよく知り抜いてた.つまり,管理者の役割は,人を働かせることにあるのではなくて,人を働く気にさせることである.

オフィス環境と生産性

  • プログラムは夜できる
    • まともな仕事をするには,朝早くオフィスに来るか,夜遅くまで残っているか,あるいは会社の喧騒を避けて一日中自宅にこもるしかない.
  • 何年も同じ上司の下で仕事をしていると,その上司の「文化」が個人差のバラツキ現象に大きな影響を与える.

企業におけるプログラマーの能力差は10倍であるといわれている.しかし,企業自体の生産性にも10倍の開きがある.

  • 頭脳労働時間 対 肉体労働時間
    • 設計,開発,書類作成等では,フロー(Flow)状態は必要不可欠
    • スイッチをON/OFFするように,自分をフロー状態にすることはできない.徐々に近づいていき,その後にフロー状態になるのであり,通常15分以上の精神集中が必要といわれている.(心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱)
    • 机の前に何時間座っていたかはどうでもいいことで,全神経を集中して仕事に取り組んだ時間が重要.
  • オフィス環境進化論
    • この徹底的同一規格のオフィス空間は,ビルの建設を命令した会社上層部の人間にとってのみ意味がある.
    • 地平線の果てまで際限なく続く同型同規格のオフィスにいると,まるで自分が番号札のついて杭になったような気分になる.

生産性の高いチーム

  • 15%の従業員が85%の管理者を養って実際の仕事をしている.実際の作業者が費やすコストはわずか10%で,残り90%は管理者の報酬として支払われている.頭でっかちな組織.
  • 作業規定に隠された意味
    • 人からなるチームでも,他のシステムと同様に,それが決定論的になるについて自己修復機能を失う.その結果,自分たちにとって全く意味をなさないことをやる方向へと進んでいく.
    • さらに悪いことに,作業規定は,有能な人々が守らされた場合,彼らに特にひどいダメージを与える.責任概念の欠如,全般的な動機づけの失敗.
    • 悪意の追従:人々は作業規定を無視しないばかりか,彼らは,それをやることが時間の無駄や動かない製品を,あるいは意味のない文書を作ることになるのを知りながら,そこに書いてあるまさにその通りに作業する

チーム編成の目的は,目標の達成ではなく,目標に向かって一体になることである.

  • チーム殺し,7つの秘訣
    • 自己防衛的な管理
    • 官僚主義
    • 作業場所の分散
    • 時間の分断
    • 品質低減製品
    • さばを読んだ納期
    • チーム解体の方針
  • 最大の成功は,「管理」などないかのように,チームがなごやかに一致団結して働いたときである.最良の上司とは,管理されていることを部下に気付かせずに,そんなやり方を繰り返しやれる人である.

会社の中には固く結束したチームを持つ幸運に恵まれているところがある.もちろん,これは幸運ではなく,化学反応のような不思議な作用が働くからである.そんな会社にはチームの結束を促す何かがある.

  • チーム形成の不思議な作用
    • 品質至上主義を作り出す
    • 満足感を与える打ち上げをたくさん用意する
    • エリート感覚を醸成する
    • チームに異分子を混ぜることを奨励する
    • 成功チームを解散させないで保護する
    • 戦術でなく戦略を与える
  • 最も優秀な管理者としての資質は,将来に対する見通しと成熟度とをほどよく併せ持ったごく少人数の鍵となる人物を選択し,こうした能力のある人たち(自由電子)を自分にやらせる能力である.