アート・オブ・プロジェクトマネジメント(13)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)


13章 ものごとを成し遂げる方法

PM採用面接官は候補者を前にして自身に対してこう問いかけます.

「プロジェクトの重要部分で問題が発生した場合,自信を持ってこの人間を議論や討論に参加させることができるだろうか,そしてどのような問題に対しても改善方法を見つけ出してくれると信じられるだろうか?」

この際の合格レベルは,「この人物はすべてをやり遂げることができるのか?」ではなく,

「この人物は自らの手に余る事態が発生した際,いつ支援策を要求したらよいか判っているだろうか?」

というものになると書かれています.

面接官のみならず,マネージャやPM,チームリーダーの視点からみても,これは「ものごとを成し遂げる」人がもつべき重要なファクターであると実感します.

優先順位付け

Scott Berkun は,PMとして過ごしている時間の大半は,順序付けられた一覧表の作成に費やされていると述べ,ものごとを成し遂げるということは,重要なことを明確にするとともに,その判断結果をチームにおけるすべてのやり取り(メール,質問,打ち合わせ)に反映させるということにかかっていると説明しています.

順序付けられた一覧表(一般的には,目標,機能,作業項目の3つ)を壁に貼り,それをメンバー全員で共有するというのは,まあ普通だと思ったのですが,目からウロコだったのは境界線を1本だけ引くということです.

第1 級優先順位とその他もろもろを明確に分離せよということです.第1級優先順位とは,あれば便利とかできれば欲しいなどといったものではなく,成功する上で必須の項目であり絶対に実行する必要があるものを指します.

僕は,第2級優先順位,第3級優先順位…と分類していたのですが,後になって出てくる設計追加 /変更への対処/交渉に苦労していました.頭の中にしかなかったこの1本の境界線を明示または事前に共有しておけば,「その要求はこの線の上ですか?下ですか?」と問うだけで迅速に交渉ができそうです.

5つの「ノー」

優れたPMやリーダーは,目標にそぐわないものごとに対して「ノー」と言うことで,チーム全体のレベルを一定に保ち続け,チームを率いていかなければならないのです.

  1. 「ノー,それは我々の優先順位に合致していません.」
  2. 「ノー,時間ができた場合にのみ行います.」
  3. 「ノー,あなたが○○を行ってください.」
  4. 「ノー,次のリリースで考えます.」
  5. 「ノー,絶対ダメです.」

冷酷であれ

有能なPMは,他の人々があきらめるような状況にあっても,選択肢を探し求めようと努力します.そして彼らは,皆が恐れる役員が言ったからとか,専門家がそう言ったからという理由で誰もがそのまま受け入れていた前提を改めて問い直すのです,と述べ,魔法の質問を与えてくれます.

「まだ試していないことは何だい?」

「あなたが知っていることは,どのようにして知ったのですか?」

冷酷であれという言葉の裏には,問題の99%には解決策があると信じるとともに,手元の情報で解決策が得られない場合,相手が誰であろうとも突っ込んだ疑問を投げかける必要があるということを意味していると説明しています.

本章での,アポロ13号にまつわる問題解決の事例や,Scott Berkun 自身のマイクロソフトでのエピソードは,読んでいて感動すら覚えます.

ゲリラ戦術

リーダーとして抜け目なく振る舞うための,11個のゲリラ戦術が以下です.あくまでゲリラ戦術なので,結構リスク覚悟なものもありますが…

  1. 権限の保持者を知る
  2. 情報源に当たる
  3. コミュニケーション方法を変える
  4. 二人きりになる
  5. 誰かを捕まえる
  6. 姿をくらませる
  7. アドバイスを求める
  8. お願い,懇願,袖の下
  9. 人々を互いに競わせる
  10. 事前工作をしておく
  11. コーヒーや食べ物をおごる

よく,たばこ部屋こそが真のコミュニケーションの場とか言われますが,たばこを吸わない人にとっての妙案が書かれていました.「私はオフィスにドーナツとクッキーを(そしてラム酒やスコッチウィスキーも)常備しているPMをしっています」ですと,これは使えるかも!

参考文献