アート・オブ・プロジェクトマネジメント(16)
アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: Scott Berkun,村上雅章
- 出版社/メーカー: オライリー・ジャパン
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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16章 社内の力関係と政治
政治力とは,「邪悪で,弱虫で,自己中心的な人々が利用しようとしているもの」と誤った定義していた Scott Berkun は,あるマネージャの話を聞いて以来,自らの政治に対する観点が変わり,次のようなことを学んできたと述べています.
- 政治とは汚いことを表す言葉ではない
- あらゆるリーダーは,政治上や力の制約を抱えている
- 力の大きさは責任の大きさに比例する
- 政治とは,ある種の問題解決である
私は時とともに,他人とともに働く上で避けることができない不快さを「政治」のせいにして憂さ晴らしするという行為が,幼稚で身勝手なものであるということも学びました.同じことは,「マネジメント」,「エンジニアリング」,「マーケティング」などを悪者扱いし,彼らがどんなに馬鹿か,または非効率的かをあげつらうことにも当てはまります.悪者扱いしたところで,彼が賢くなったり,効率的になるわけではありません.(それが本当に問題の原因であったとしてもです.彼らは聡明なのに,あなたと同じように政治的な理由によって動きがとれないだけかもしれないのです.)
この言葉,まさに自分を見透かされたようで,ギクッとしました.いや本当にこの通りかもしれません.
力の誤用
私たちが政治を邪悪なものとして語る時,たいていの場合,それは力の誤用を意味しています.そして,力の誤用は次の3つの場合に起こりやすくなると述べています.
- 個人の目標とプロジェクトの目標が合ってない
- プロジェクトのためになることについての個人の意見が合ってない
- チームの関心がバラバラである
そして,力の誤用を発生させる原因には,プロセスとモチベーションの2つがあると指摘しています.
力の誤用を発生させるプロセス
- 不明確な意思決定プロセス
- 誤解/コミュニケーション不良
- 不明確なリソース割り当て
- 説明責任の欠如
- 不明確な目標やなおざりにされる目標
モチベーションに起因する力の誤用
- 他者の保護
- 自らの利益
- エゴ
- 嫌悪/復讐
こういった症状を軽減する最善の方法は,力を適用する原動力が,プロジェクトのビジョンによって定義された目標と一致するようにすることだと述べています.
そうは言っても,現実にはそれらを一致させることは非常に難しいと実感します.オープンな場で互いに話すことでそのズレを少しでも補正するのが精一杯であるように思います.
場を作る
政治がどんなにストレスの溜まるものであったとしても,プロジェクトマネージャとしてのあなたは,自らの場を作り,コントロールする力を持っています.ゆえに優れたマネージャは,聡明な人々が快適に作業できる安全かつ公正な場を築き,愚行と行き当たりばったりの外界とのバランスを考えながら,自らのチームを守っていくのだと示唆しています.
組織階層のどのレベルにおいても言えることですが,こういった保護を伴うリーダーシップの実現には,一段上の努力と成熟が必要となります.しかし,それこそが優れたマネジメントの本質なのです.
参考文献
- 「パラドックス系マネジャーがビジネスを変える!」
- 「Power Plays」
- 「権力(パワー)に翻弄されないための48の法則」
- 「人を動かす」
- 「影響力の武器」
- 「企業変革力」