偽装請負

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)

去年から新聞で見かけるようになった,「偽装請負」という言葉.気になっていたので読んでみた.

職場には派遣もしくは請負(委託)の人が大勢いる.けど,その人たちの雇用形態が何なのかなんて僕は考えたこともなかった.まず,労働者派遣と請負,偽装請負の説明から.

bold;">労働者派遣:派遣元(人材サービス会社)が自己の雇用する労働者(派遣労働者)を他人(派遣先メーカー)の指揮命令の下に派遣し,派遣先のために労働に従事させること.派遣元,派遣先は労働者派遣法に従わなければならない.
bold;">請負:受注者(人材サービス会社)に依頼された仕事を完成させ,その結果を引き渡して報酬を得ること.労働者は,受注者に雇用され,受注者の指揮命令の下で働く.労働者が発注者に使用されることはない.受注者は発注者から独立して仕事をこなす.
bold;">偽装請負:形式上は請負契約であり,労働者は雇用関係は受注者と結んでいるが指揮命令関係は発注者と結んでいる.

全労連のサイトより

つまり,実態としては,外部からまたは派遣のように来てもらい仕事をさせているにも関わらず,労働者派遣契約を結ばず,表面的には請負契約であるかのように装う,これが「偽装請負」の定義だ.1990年代後半から製造業の工場に蔓延していたらしい.

何が問題なのかというと,請負労働者に対して何の安全保障もなく法律に守られることも無く,劣悪な環境化での使い捨てがまかり通ってしまうということだ.

本書では,キャノンや松下といった大企業の工場における偽装請負の実態を,朝日新聞の特別報道チームの取材によって明らかにしている.数々の取材結果を読むと,その被害者(労働者)の扱いは本当にヒドイとしかいいようがない.しかもそのうまみはすべて,失われた10年の間ずっと大企業,または偽装請負業者に流れてたわけである.

最後に課題として2点あげている.

  • 請負労働者の正社員化
  • 請負労働者のキャリアアップ

政府もこういったことを進めているわけだが,実際はどうなのだろうか.あるハローワーク職員はいう.

「非正規労働を続けてきた人たちは,生活のための労働に追われ,時間的に余裕がない.自分の能力が何に向いているのかを考える暇もない.<中略>
本人が『自分には単純作業しかできない』と思い込んでしまっているケースもある.」

問題は深刻だ.僕は今は正規社員ではあるが,いつ自分に降りかかってくるかも知れないということだけは肝に銘じておこうと思った.

メモ

請負,派遣チェックリスト(1つでも当てはまれば派遣)

  • 作業場での労働者の配置、変更などの指示は、就業先企業の社員が行っている。
  • 労働者に対しての技術指導や指揮・命令は就業先の社員が行っている。
  • 作業スケジュールの作成や調整は、就業先の社員が行い、労働者に指示をしている。
  • 欠勤等などがあった時、人員配置は就業先が指示、配置をしている。
  • 就業先の社員が労働者の就業時間や残業、休日出勤の指示を行っている。
  • 使っている機械・設備は就業先企業のものである。

違反な派遣

  • 許可・届け出のない派遣
  • 長期派遣
  • 二重、三重派遣
  • 偽装出向